良き旅を

わたしが免許を持ってから3代目に来てくれたのがラパンのラヴィだった。
初代はカルタスのルピー
2代目はレガシーの蒼さん
3代目でラパンのラヴィに出会った。
それから15年。
甥が生まれて送迎をしてくれたり、行方不明になったハチ〔ビーグル〕を探して運んでくれた。
買ってすぐ400キロの長旅を共にした。
ある時は一人カラオケボックスになり、ある時は泣き場所だった。


6年前
福島〔県〕から大阪までこの小さな身体にぎっしりと荷物を積んで共に旅してくれた。富山を経由した720キロ約16時間の旅だった。

大阪に友人ができるまでは、ラヴィがその駐車場に居てくれるだけで、心強かった。

大阪にきてから、車を使う生活ではなくなり、あまり乗る機会がなくなった。
エンジンをかける機会もなくバッテリーが上がってしまうのを繰り返した。でも手放すのも嫌だった。依存していたのだ。

駐車場の更新の機会が来て、やっと手放すことを決めた。
初めに教えてもらったのは廃車の手配の会社だった。

車の価値はない場合でも鉄としての価値で買い取りますという方向だった。

なんだか違う気がして、今度は買取査定の一括問合せをした。

数分して電話やメールでたくさんのアテンションが来た。

何件かは値段がつかないので取引できないとメールで断られる。
2件ほど電話で連絡がついた。

1件はメールでの内容が興味があったので週末に見てもらうアポをとった。

もう1件は電話をした時点で、
欲しかった車だったのでたくさん電話してすみません、といってくれ、もしできたら、今日の夜に見にきたいと言ってくれた。
声色の優しい人だった。
仕事後に帰宅してからの遅い時間に約束をした。

査定士の彼は、車を見るときにも丁寧だった。年式と正式な走行距離に驚きつつも、シートの綺麗さなどをみてくれた。
会社の確認後車に値はつかない、けれど廃車ではなくて誰かと車をつなぐことを念頭に置いているという話をしてくれた。

何より、誰かとつなぐという言葉が嬉しかった。

私が一番欲しかった言葉だ。

そして、決めた。
彼に託そうと思った。

誰かに繋げてくれ、橋渡しをしていただく。
その先はわからないけれど、わたしは信じられると思った。

契約から数日、いつかのタイミングで持っていくと言われていた。
そして今日、ついに引渡しの日が来た。

今夜は本当に疲れていてすぐに休んだ。
朝目覚めて着信をみると、査定士の彼の番号だった。
家を出て見下ろした時、もうラヴィはいなかった。

昨日の帰宅時にサイドミラーに触れ、無意識にわたしの口は〔良き旅を〕と呟いた。


breath works _ 「 呼吸」

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