息をのむ
扉一枚で
喧騒と店内は隔たれて
なによりBGMが華やかに流れる。
誰かたちの会話より
ヤカンからの蒸気音が浮遊した。
シンプルなmenuに目を通す。
カフェオレ、淹れ方ネルドリップ
が目に飛び込んできた。
ネルドリップだと珈琲色が強く出ます、
そう確認され、より飲みたくなる。
店主はひとつのCDが終わると、
そこに新参した誰かに合う曲を選曲している気がした。
入ってきたときには、南米のノリに近いリズムのジャズがかかっていたが、その次はクラシカルな正統派なジャズが流れた。
暖色の灯りで薄暗い店内に、まろやかな珈琲アロマ、程よく眠りに誘われてしまう。
ゆっくりと丁寧に
ひとしずく
ひとしずく
が注がれ
デカンタに
溜まっていく珈琲。
穏やかな店主のゆらめきが
とまり、一点に集中する。
そして
息をのむ
そして
シンプルにカウンターに
カフェオレは置かれた。
わたしはカフェオレボウルを
両手で包み掌から温かさを感じる。
目をつむると奥からわき起こる
深い珈琲自体の香りがした。
ひとくち。
ふたくち、みくち飲み込む。
自然と次を求めてしまう。
少し苦味のある、絶妙なまろやかさ。
刻はとまり
いま、ここにいる感覚の
幸福。
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