Sense of Wonder
近鉄高安駅から下市口駅に向かった。
下市口駅からは、洞川温泉行きのバスにのり1時間半程度ゆられる。
途中トンネルに入り出たときには、雪国の一節にあるような雪景色になる。
下界は春を迎える準備が始まっているのに、この場所は雪に包まれていて、落ち着く。
この山の静けさは目まぐるしい春を迎える前に地にしっかりと根をはやすような落ち着きを感じる。
天川 空は、行くべき時に間口が開かれた場所。
ひらめいてしまったので当日の朝、予約をいれたが、快諾してくださった。
食事をしながら、様々な話をした。
食に思うこと。
これからのエネルギーのこと。
人とのつながりのこと。
ハートが開いた人との出会いについて。
近頃、私の思考の中でざわついていたことが、いろんな角度で落ち着いた。
雪山を見ながらの贅沢な時間だった。
雪がやみ、空が明るくなってきた。
洞川から、天川まで歩こうという意欲が湧いてきた。
ご主人が、それならばみたらい渓谷沿いを帰ったら良いと教えてくださった。
少年のような輝いた眼差しが印象的だった。
雨が降り、雪に変わり、わたしはみたらい渓谷を散策したかったが諦めていた。
帰り間際に、メッセージをいただき、そとを見ると雪は止み雲は白く変わっていた。
わたしは足早に道路沿いを下り渓谷に近づく道をたどる。
みたらい渓谷遊歩道から山に入ると、山道はあるが、スギの葉や落ち葉にうもれ、獣道のように感じた。
白いスニーカーが瞬く間に泥が跳ね黒くなる。
雨のあとの森は湿気に満ちて肌が潤う。
みずたまり、石のあいだわたしは弾む足を落ち着けながら一歩一歩踏みしめる。
時々立ち止まり周りを見回す。
川のせせらぎ、鳥の声、木々のざわめき。
わたし以外に人の気配はない。けれど恐れはない。
木々の間から太陽の光が射し込んできた。
風で木々が揺れる。見上げた先の木々は纏った雫を振り落し、光を帯びた飛沫がわたしに降り注ぐ。
ことばにならなかった。
慌てて写真に収めようとしたが、先ほど電池がなくなったのを思い出した。
今しかない美しさ、今この一瞬を目に焼き付ける。
昨日いた山は遠く感じた。
昨日のことなのに、何日もたつような遠き記憶。
わたしの中にだけ残る一瞬。
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