音と感覚と
昭和の匂いのする団地に住んで5年。
5階の窓からは夕日射す屋根の群が見える。
夕方。
隣りの棟と棟の下からは、子どもたちの声がして、その上から、そろそろ帰りなさーい。と母らしき人からの声が響く。
縄跳びをする音。バトミントンの羽根を飛ばす風をきるような音。時折烏の鳴き声がし、上空を通り過ぎる飛行機のジェット音がする。
わたしはお風呂に水をためる。
そして、蛇口から流れ出る水の音がそこに起こる。
世界は音に溢れていて。
最近、心地よく聴ける音は、全身で聴くような肌に染み込んでいくような音楽。
Goldmund「Sometimes」
ピアノの音が連なり、穏やかに優しく肌を撫でるような優しい旋律。
寝転び聞き入っていると、久しぶりに自分をほぐしたくなった。
両足の膝から足裏、両腕の二の腕から指先まで。
わたしがマッサージすると、
寄せては返す波のように
流れていく。
その動きを見た人は、
怪しい踊りを踊っているかのような
揺れていて一緒に眠くなるような
そんな気がするかもしれない。
とじぶんでは思う。
無心でほぐすうちに、
連なり押し寄せる波のように
過去のことが浮かんできた。
8年間続けて働いていたリラクゼーションサロンのこと。お客さまとお話したこと。オイルマッサージを覚えた須磨のこと。淡路島の海岸。京都で出逢ったの写真家さんのこと。
浮かんできたものが、消えて残ったもの。
マッサージをする掌が喜んでいる。
その感覚を思い出して、ほんの少しだけ涙が滲んだ。
音のスイッチ
そして
感覚はきづいている。
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